労災保険は本来「労働者」のための制度。しかし社長も一人親方も、実態は労働者と変わらない働き方をしています。その隙間を埋めるのが特別加入制度です。
先生……ましろのお家、和菓子屋さんなんだけど。
お父さんは社長だから、労災保険は使えないのかな。
いい質問。
原則としては使えません。
労災保険は労働者のための制度だから。
でも、特別加入制度という道があるの。
社長も入れるの!? なんで?
小さな会社の社長は現場で職人さんと一緒に働いていることが多いでしょう。
業務の実態からみて、労働者に準じて保護するにふさわしい者を対象にしているの。
種類は3つ。第1種特別加入者が中小事業主等、第2種特別加入者が一人親方その他の自営業者と特定作業従事者、第3種特別加入者が海外派遣者です。
第1種の「中小事業主等」の範囲は、常時使用する労働者数で決まるのですね。
何人までですか。
そう。
金融・保険・不動産・小売業は50人以下、卸売業・サービス業は100人以下、その他の事業は300人以下。
この数字は労働保険事務組合に委託できる範囲と同じです。
ただし第1種には2つの条件があるわ。
一つ、労働保険事務組合に労働保険事務を委託していること。
二つ、その事業に使用されるすべての労働者を包括して加入させていること。
従業員を守ってから、自分も守れってことか。
筋が通ってるね。
ジャスミンさん、いい言い方ね。
第2種の一人親方等は、その団体を事業主、構成員を労働者とみなして加入します。
第3種の海外派遣者について。
海外出張の場合はどうなりますか。
そこが最頻出。海外出張は日本の事業に所属したまま外国で仕事をするだけだから、特別加入は不要。
国内事業の労災保険がそのまま適用されます。
特別加入が必要なのは、現地の事業に所属して働く海外派遣のほうよ。
「出張はそのまま、派遣は手続き」って唱えとこ?
それでいいわ。
最後に3点。
加入は申請して政府の承認を受けて初めて効力が生じること。
給付基礎日額は一定の範囲から希望額を申請して労働局長が決定すること。
そして特別加入者には二次健康診断等給付は行われないこと。
確認クイズ
特別加入制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 中小事業主等が特別加入するためには、労働保険事務組合に労働保険事務を委託していることが必要である。
- 海外出張者は、第3種特別加入者として加入しなければ労災保険の保護を受けられない。
- 特別加入者に対しても、二次健康診断等給付が行われる。
- 特別加入の申請をすれば、政府の承認を待たずに直ちに保険関係が生じる。
こたえを見る
正解: 1. 中小事業主等が特別加入するためには、労働保険事務組合に労働保険事務を委託していることが必要である。
正解は選択肢1。第1種特別加入(中小事業主等)には、労働保険事務組合への事務委託と、すべての労働者を包括して加入させることが必要です。選択肢2は誤りで、海外「出張」は国内事業の労災保険がそのまま適用されるため特別加入は不要です(特別加入が必要なのは海外「派遣」)。選択肢3も誤りで、特別加入者に二次健康診断等給付は行われません。選択肢4も誤りで、政府の承認があって初めて効力が生じます。