労災保険は「誰のために」「どんな災害に」備える制度なのか。第1条の目的規定から、適用事業・労働者の範囲、そして労働基準法の災害補償との関係までを一気に整理します。
今日から労災保険法に入ります。
まずは第1条。
労災保険は、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由、そして通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡等に対して、迅速かつ公正な保護をするために必要な保険給付を行う制度です。
業務中と、通勤中と……あと掛け持ちで働いてる人のぶんもあるんだ。
三本柱ってこと?
そう、そこが柱ね。
それに加えて、社会復帰促進等事業も行う。
給付だけでなく、義肢の支給や特別支給金、労災病院の運営まで含む幅の広い制度です。
先生、複数業務要因災害というのは、一つの会社だけでは労災と認められない負荷を、複数の会社ぶん合わせて評価する、という理解で合っていますか。
その理解でいいわ。
単独の事業だけを見れば業務災害と言えない場合でも、二以上の事業の負荷を総合して判断する。
脳・心臓疾患や精神障害が典型ね。
ましろのお家、和菓子屋さんだけど……お店で働く人が一人でも、労災保険って入るのかな?
入ります。
労災保険の適用事業は、労働者を使用する事業。
パートでもアルバイトでも日雇いでも、一人でも使えば強制適用です。
国籍も在留資格も問いません。
例外もあります。
国の直営事業と官公署の事業は適用除外。
それから、農林水産の一部の小規模な事業は暫定任意適用事業として、加入するかどうかを選べます。
保険料は誰が払うの? バイト代から引かれるやつ?
労災保険の保険料は事業主が全額負担。
労働者の負担はゼロよ。
ここは健康保険や厚生年金と決定的に違うところ。
……その理由は、労働基準法にあるんじゃないですか。
もともと使用者が災害補償の責任を負っているから、その責任を保険化したもの、ということですよね。
見事。
労基法は使用者に災害補償の無過失責任を課している。
そして労災保険法の給付が行われるべき場合には、使用者はその補償責任を免れる。
保険が肩代わりする構造なの。
……会社が潰れちゃっても、働いてた人はちゃんと守られるってことだよね。
それ、すごく大事なことだと思う。
確認クイズ
労災保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 労災保険は、労働者を常時5人以上使用する事業でなければ適用されない。
- 労災保険の保険料は、労働者と事業主が折半して負担する。
- 労災保険法に基づく保険給付が行われるべき場合には、使用者は労働基準法上の災害補償の責任を免れる。
- 労災保険は、日本国籍を有する労働者にのみ適用される。
こたえを見る
正解: 3. 労災保険法に基づく保険給付が行われるべき場合には、使用者は労働基準法上の災害補償の責任を免れる。
正解は選択肢3。労基法84条1項により、労災保険の給付が行われるべき場合、使用者は労基法上の災害補償責任を免れます。選択肢1は誤りで、労働者を1人でも使用すれば強制適用(一部の農林水産業は暫定任意適用)。選択肢2も誤りで、労災保険料は事業主が全額負担します。選択肢4も誤りで、国籍・在留資格を問わず適用されます。