保険給付が制限される場面には、必ず制限される場合と、制限「できる」場合があります。条文の語尾で読み分けます。
今日は給付制限。
ここは条文の語尾がすべてよ。
「行わない」と「行わないことができる」を読み分けるの。
義務的な制限と、裁量的な制限。
……語尾で峻別する、ということですね。
そう。
まず絶対に給付しない場合。故意に給付事由を生じさせたとき、または自己の故意の犯罪行為により給付事由が生じたとき。
これは「保険給付は行わない」。
例外なし。
次が裁量的な制限。
闘争、泥酔、または著しい不行跡によって給付事由を生じさせたとき——これは「全部または一部を行わないことができる」。
……ケンカとか、酔っぱらってケガしたとき。
でも、必ず切られるわけじゃないんだ。
先生、療養の指示に従わない場合はどうですか。
正当な理由なく療養に関する指示に従わないときは、保険給付の一部を行わないことができる。
全部ではなく一部よ。
詐欺その他不正の行為で給付を受けようとしたときは、6か月以内の期間を定めて、傷病手当金・出産手当金の全部または一部を支給しない決定ができるわ。
ちょっと待って。
刑務所に入ってる人は? 病院どうなるの?
刑事施設や少年院などに収容されている間は、その者の疾病・負傷・出産に関する給付は行われないの。
公費で医療が提供されるからよ。
ただし——被扶養者に係る給付、つまり家族療養費などは行われるわ。
家族に罪はないもの。
不正利得の場合はどうなりますか。
不正に給付を受けたとき、です。
保険者は、その者から給付の価額の全部または一部を徴収できる。
さらに保険医療機関が不正に費用の支払を受けたときは、返還に加え、その額に100分の40を乗じた額を支払わせることができる。
加算金ね。
40%増し!? 相当きついじゃん?
抑止のためよ。
最後に第三者行為。
交通事故など、第三者の行為で傷病が生じた場合ね。
保険者が給付を行ったときは、その価額を限度として、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する——代位取得よ。
逆に先に第三者から賠償を受けていれば、保険者はその価額の限度で給付を免れるわ。
二重に填補させない、という原則の表れですね。
被害者が得をしすぎることも、加害者が逃れることもない。
確認クイズ
保険給付の制限等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 闘争または泥酔により給付事由を生じさせたときは、保険給付は必ず行われない。
- 自己の故意の犯罪行為により給付事由を生じさせたときは、保険給付は行われない。
- 被保険者が刑事施設に収容されている間は、その被扶養者に係る保険給付も行われない。
- 保険医療機関が不正に療養の給付に関する費用の支払を受けた場合、返還させることはできるが、加算金を課すことはできない。
こたえを見る
正解: 2. 自己の故意の犯罪行為により給付事由を生じさせたときは、保険給付は行われない。
正しいのは選択肢2。故意の犯罪行為または故意により給付事由を生じさせたときは保険給付は行われない(絶対的給付制限)。選択肢1は誤りで、闘争・泥酔・著しい不行跡は「行わないことができる」裁量的制限。選択肢3は誤りで、被扶養者に係る給付は行われる。選択肢4も誤りで、返還に加え100分の40を乗じた額を支払わせることができる。