パートタイム・有期雇用労働法 — 均衡待遇と均等待遇

待遇差はどこまで許されるのか。個々の待遇ごとに不合理性を問う8条の均衡待遇と、差別そのものを禁じる9条の均等待遇。分かれ目は「変更の範囲」です。

編集・検証: 社労士スタディ編集部 公式情報: 全国社会保険労務士会連合会 試験センター 制作・検証方針

同じ職場で働くのに、待遇が違うのはどこまで許されるのか。均衡待遇と均等待遇の境目を、条文の要件で切り分けます。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

パートさんと正社員で、賞与に差がある。
これは違法かしら?

戸倉 ジャスミン(怒る) 戸倉 ジャスミン

差があるのはズルいよ! 違法!

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

…ジャスミンさん、そこは即断できないと思います。
短時間・有期雇用労働法は、差を一律に禁じているわけではないはずです。

香月 リサ 先生(笑顔) 香月 リサ 先生

つむぎさんの慎重さが正解ね。
この法律には性格の違う2本の柱があるの。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

1本目が8条の均衡待遇。
基本給、賞与その他の待遇の『それぞれについて』、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情のうち、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

…待遇を、ひとまとめじゃなくて、ひとつずつ見るんだね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

ましろさん、そこが8条の核心よ。
『総額で見て同じくらいだからいい』は通らないの。
手当ごと、賞与ごとに理由を問われる。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

2本目が9条の均等待遇。
こちらは差別的取扱いそのものの禁止よ。
ただし、適用されるのは条件を満たした人だけ。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

職務の内容が通常の労働者と同一で、かつ職務の内容及び配置の変更の範囲も全雇用期間を通じて同一と見込まれる場合——この2つがそろって初めて、ですね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

その通り。
仕事が同じというだけでは足りない。
転勤や配置転換の範囲まで同じかどうかを見るの。
ここが8条と9条を分ける関門よ。

戸倉 ジャスミン(普段) 戸倉 ジャスミン

要は、8条は『不合理な差はダメ』、9条は『まったく同じ立場なら差そのものがダメ』ってこと?

香月 リサ 先生(笑顔) 香月 リサ 先生

見事にまとめたわね、ジャスミンさん。

雪村 ましろ(普段) 雪村 ましろ

でも…なんで差があるのか、聞いてもいいのかな。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

聞いていいの。
14条の説明義務よ。
雇入れ時に講ずる措置の内容を説明し、求めがあったときは通常の労働者との待遇の相違の内容と理由を説明しなければならない。
しかも、説明を求めたことを理由に不利益な取扱いをしてはならないわ。

深見 つむぎ(普段) 深見 つむぎ

労働条件の明示にも上乗せがありますよね。

香月 リサ 先生(普段) 香月 リサ 先生

特定事項ね。
労基法15条の明示事項に加えて、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口——この4つを文書の交付等で明示しなければならない。
違反には過料があるわ。

確認クイズ

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、労働基準法で明示が義務づけられた事項に加え、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無及び相談窓口を、文書の交付等により明示しなければならない。
  2. 不合理な待遇の禁止(均衡待遇)は基本給及び賞与についてのみ適用され、その他の待遇には適用されない。
  3. 職務の内容が通常の労働者と同一であれば、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なっていても、差別的取扱いが禁止される。
  4. 事業主は、短時間・有期雇用労働者から通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由について説明を求められても、これに応ずる義務はない。
こたえを見る

正解: 1. 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、労働基準法で明示が義務づけられた事項に加え、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無及び相談窓口を、文書の交付等により明示しなければならない。

正解は選択肢1です。これらは「特定事項」と呼ばれ、労働基準法15条の明示事項に上乗せして文書の交付等による明示が義務づけられています。選択肢2は誤りで、8条の均衡待遇は「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて」個々の待遇ごとに不合理性を判断します。選択肢3も誤り。9条の均等待遇が適用されるのは、職務の内容が同一であり、かつ職務の内容及び配置の変更の範囲も全雇用期間を通じて同一と見込まれる場合であり、職務の内容が同一というだけでは足りません。選択肢4も誤りで、求めがあったときの説明は義務であり、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いも禁止されています。

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