労働契約法には罰則も監督機関もありません。それでも社労士試験で問われ続ける理由を、条文の性格から確かめます。
今日から一般常識に入るわ。
トップバッターは労働契約法。
最初に一つ、衝撃の事実を言っておくわね。
この法律、罰則が一つもないの。
えーっ! 罰則ゼロ!? じゃあ守らなくても平気ってこと?
そう言うと思った。
違うわ。
労働契約法が定めているのは民事的効力。
労働基準監督署が取り締まる法律じゃなくて、裁判所が『その解雇は無効』と判断するための物差しなの。
労働基準法は罰則と監督官がセットの取締法規、労働契約法は当事者間のルールブック。
そういう住み分けですね。
そう。
だから労働契約法には監督官も、届出義務も、罰則も登場しない。
労基法との対比で頭に入れて。
うぅ〜ん…ましろ、条文が何て言ってるのか知りたいなあ。
3条が労働契約の原則ね。
労使対等の合意、就業の実態に応じた均衡の考慮、仕事と生活の調和への配慮、信義誠実、そして権利濫用の禁止。
この5つが土台よ。
そして5条が安全配慮義務。
使用者は、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をするものとする——判例が積み上げてきたルールを条文にしたものね。
あ、それ部活と同じかも。
顧問の先生が『暑いから水分とれ』って言うのって、放っておいたら危ないからだもんね。
いい例えね。
契約書に書いてなくても、使用者は当然に負う義務——それが安全配慮義務よ。
先生、16条の解雇権濫用法理も条文になっているんですよね。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効、と。
その通り。
しかも同じ構造が14条の出向、15条の懲戒にもあるの。
『権利の濫用にあたる場合は無効』——出向・懲戒・解雇は三点セットで覚えて。
…じゃあこの法律って、『やってはいけない』を罰で止めるんじゃなくて、『やっても効かない』ことにして止めてるんだね。
ましろさん、それが労働契約法の本質よ。
無効にすることで労働者を守る——罰則がないのに強い法律なの。
確認クイズ
労働契約法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 労働契約法に違反した使用者には、労働基準監督署長による是正勧告と罰則が科される。
- 使用者が労働者を解雇する場合、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、その解雇は権利を濫用したものとして無効となる。
- 労働契約法は、国家公務員及び地方公務員にも適用される。
- 使用者は、労働者の合意がなくても、就業規則を変更することにより、常に労働者の不利益に労働条件を変更することができる。
こたえを見る
正解: 2. 使用者が労働者を解雇する場合、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、その解雇は権利を濫用したものとして無効となる。
正解は選択肢2で、労働契約法16条の解雇権濫用法理そのものです。選択肢1は誤り。労働契約法には罰則も監督機関による是正勧告もなく、民事上の効力を定める法律です。選択肢3も誤りで、国家公務員・地方公務員には適用されません。選択肢4は誤り。9条は、労働者の合意なく就業規則の変更によって不利益に労働条件を変更することはできないと定めるのが原則で、10条により、変更後の就業規則を周知し、かつ変更が合理的である場合に限って例外的に認められます。